東京高等裁判所 平成7年(行コ)112号 判決
一般に、地方公共団体の所有する財産が第三者によって不法に占有された場合、当該地方公共団体の当該財産に対する支配が妨げられ、その財産的効用が害されることになるから、これにより地方公共団体が被る財産的損害の回復を図ることは財務会計上の行為であって、地方公共団体が右損害の回復のための措置を怠るときは、住民は、いわゆる住民訴訟により、地方公共団体に代位して、不法占有者に対し、損害賠償、妨害排除等の請求をすることができるものと解すべきである。しかしながら、地方公共団体の所有する財産の中でも、普通財産や、当該地方公共団体自身の用に供される公用財産については、その効用の侵害は純然たる財産管理の問題として全面的に財務会計的見地からの処理に委ねられるべきものと解され、これが不法占有されることによって地方公共団体の財産に生じた侵害の回復についても、専ら一般的・経済的な損失の回復という観点からのみ把握されるべきものであるのに対し、道路等の公共用財産は、元来個々の行政目的に従って一般公衆の共同使用に供されるものであり、その供用自体は単なる財産管理とは次元を異にする性質のものであるから、当該公共用財産の具体的な供用自体の回復という問題は、関係する個々の行政分野での行政権の行使の問題に属し、財務会計上の問題として住民訴訟の対象とすることのできない事柄というべきである。
これを本件についてみると、大磯町町長が被控訴人に対し本件鳥居等の撤去を求めることなく、被控訴人の本件道路部分に対する占有を放置しているとしても、控訴人が本訴訟で請求している本件道路部分の明渡しは、その財産的管理の問題ではなく、道路行政上の問題と解すべきであるから、これを住民訴訟の対象とすることはできない。もっとも、本件道路部分につき現実に道路として供用が開始されたことがあるのかどうかは明らかでなく、本件道路部分は道路として予定されている土地にすぎない可能性もあるが、その場合であっても、このような土地の使用等に関しては道路法九一条二項の規定により同法の道路管理等に関する規定が準用されるから、この点は前記の結論を左右するものではない。
(加茂紀久男 鬼頭季郎 三村晶子)